理想の恋人 付き合う相手は、よく気が付いて、ちっちゃくて、少し天然でもよくて・・・少し世間に疎くてもいいから、美人じゃなくても いいから、一緒にいてくつろげる人、の予定だったんだ。 「おい、有楽町、次の会議の資料だ。今度イベントもあるから重々把握しておけよ。」 副都心にかけられた迷惑のせいで残業して漸く家に帰ると、西武池袋に封筒を渡された。 「わかった・・・明日見るよ。」 「しっかり読んでおけ。というか、さっさと読め。」 「・・・はいはい。」 「はいは一回!」 「はい。」 西武池袋は美人だ。派手なコートも似合うし、タッパもあるし、いつも堂々としていてかっこいいといえなくもない。で も、俺が夢見た恋人ってのは疲れて帰宅したら、『おかえりなさい、毎日お疲れさま。』とかって笑ってくれる可愛い子な んだ。 「何をたらたらしている。しゃきしゃきせんか!」 「無理いわないで・・・俺今日遅延・・・」 「たらたらしていると寝る時間が減るだろう。ほら、早くせんか。」 そういって西武池袋が有楽町の鞄を持って部屋に入っていった。 「・・・腹減ったなぁ・・・」 「なら早く食べろ。冷めるだろうが。」 「あ・・・すごいな。」 1Kの部屋の小さなテーブルの上には一汁三菜、男の手料理とは思えない家庭的な料理が並んでいた。 「お前に作るのは初めてだったか?」 「うん、池袋はいつも夕飯家で食べるじゃん。」 「そういえばそうだな。今日は新宿も秩父も拝島もみな外で食べるといっていたから、西武有楽町には外で食べるよう に言ったんだ。小遣い渡したら妙に喜んでいたなぁ・・・」 手料理より、外食のほうがいいのか・・・としょぼくれた西武池袋はほっぽって、有楽町は早速テーブルにつく。 「俺は料理できないし、疲れると面倒だし。うっわ、超うれしんだけど!」 「自分の家ではないから大したものは出来なかったけどな。」 「いや全然!ありがとう!」 西武池袋は顔を少し赤くして照れていた。 「デカくて、電波だけど。しっかり者で、美人で、いざってときは優しくて、予想とはちょっと違ったけど、十分幸せで す!」 「口に出てるわ、ばか者。」 頭を殴ってきた西武池袋はさっきよりも顔を真っ赤に染めていて、 それはそれは幸せを感じさせてくれた。 |