池袋駅西口で会いましょう エロス注意。大人のお姉さん向けです。 西武池袋×東武東上です。 池袋駅西口での待ち合わせは13時。休憩の1時間と、池袋にデパートを持つ鉄道会社同士での情報交換の時間が 1時間、合わせて二時間。 「二時間もあれば十分だな。」 「十分だろう。」 時計を見る。まだ13時5分。 「しかし、シャワーをゆっくり浴びてる時間はないな。」 「一緒に風呂入れば問題ないだろう。」 色気も恥じらいもなく平然と交わされる会話に聞き耳を立てて目頭をたてたり、好奇心に顔を赤く染めるような、他人 に注意を持っているような人間は都会の駅構内にいない。 派手な青いコートは脱いでワイシャツ姿の西武池袋と、作業着にTシャツと相変わらずの格好の東武東上線は並んで 歩いた。 「いつものとこでいい?」 「お前の好きなところでいい。」 「じゃあ、いつものところで。」 駅からすぐのラブホテルを東上は気に入り、ポイントカードを作ってポイントを貯めていた。ポイントがどれだけ貯まっ たのか西武池袋は非常に気にしているが、おくびにも出さず、気にするそぶりもしない。『一緒にきた回数』分のポイン トは把握している。でも、怖くてきけない。 「・・・部屋、どれでもいいか?」 「どれでもいい。好きなのを選べ。」 嬉々として選ぶ東上の心情を図りきれていない。西武池袋はいつも複雑な気持ちになる。部屋に入ってしまえばどう せ忘れると雑念を払うが、消えることはない。 もともと嫌い合っているから大した会話はしない。しかし、向かい合ってバスタブにつかっているのに無言、は気まず かった。 「・・・なぁ、西武池袋。」 「なんだ?」 「いや、なんでもない。」 「言いかけたのなら最後まで言え。」 「別にいいよ、大したことじゃないし。」 「大したことないならなおのこと良いではないか。別に、昨日の夕飯の内容を聞かれても怒らないぞ。」 「そんなことには興味ないんだけど・・・」 なんとなく、また沈黙が流れる。この空気に困っているのは西武池袋だけではなく東上もで、東上の気まずそうにうつ むいた顔は可愛いと思う。 「話をしに来たわけでもないのだし、用はここで済ませても問題なかろう?」 「・・・体が冷えそうだけど。」 「帰って働けば温まる。」 東上の日に焼けた肌は健康的で、見た目に反して手にしっとりと吸い付く。西武池袋は口にも行動にも愛情の程を示 せないが、行為の最中は愛情に比例して、優しく、手の込んだ前戯を施した。動くたびにバスタブのお湯がはねる。の ぼせそうなお湯の温度も次第に下がっていく。 明るい浴室の中で、真昼間から情事に励む様子を、会長はどう思われるか、と一瞬素に戻ったが、今だけはと振り切 るように首を振った。今現実に戻ったところで、今会長を崇拝したところで、会長の利益となることは何もないだろうと利 己的な判断を下したのだ。 一度行為を終えて浴室を出て、髪を乾かす東上の後姿に妙に興奮して後ろから抱きしめた。 「なんだ?」 「・・・もう一回したい。」 「時間ぎりぎりになるけどいいか?」 「私は構わん。」 「ならベッド行くか。」 「いや、このままここでいい。」 先ほど散々ならしたのだから大丈夫だろうとそのまま挿入すると、東上が顔をしかめた。しかし、本当に痛くて耐えら れない時は制止するので、顔をしかめるだけなら続けて良いということだと思い、そのまま挿入を繰り返す。 洗面所の大きな鏡に映された東上の顔は赤く染まって、鏡を気にしないように視線をそらしていて、その情景に何か が背筋を走る。 体内に射精して果てて、同様に果てた東上の体を抱きしめると熱かった。 「じゃあ、また。」 「また、そのうち。」 ひらひらと手を振って、東上は改札の中に消えていく。 (いつも通りだ、結局いつも通り。) 東上線の改札前で別れてしまえば、もう何も聞けない。携帯の番号は知っているけれど、親しくメールを交わすような 仲でもない。東上の行動を制限できる立場でもない。 せめてもで、西武池袋は敵地視察と理由を付けて東武デパートをうろうろしてみた。化粧品売り場はいたたまれない ので、地下の食品コーナーに逃げ込む。今年改装して広くなったお惣菜コーナーで、敵地視察とつぶやきながら昼食を 買った。結局昼食は食べていなかった。 (ホテルにいかないで、一緒に食事したら変わるのだろうか。) セックス以外ではラブホから駅までの数分でさえ間が持たないのに、何を血迷っているのだろうかと自嘲しながらも、 一つの話題になるかもしれないと東武デパートをつぶさに観察する。 せめて、次回はデートと呼べるものをしようと考えながら。 (10月18日) |