西武池袋と西武有楽町女体化 有楽町×西武池袋の子供が西武有楽町という設定です。 副都心×西武有楽町です。 大丈夫な方だけどうぞ! 初対面で副都心は有楽町に恋に落ちた。雛が親鳥を追うように愛しただけかもしれないけれど、とにかく有楽町を独 占したいと、その体を自由にしたいと欲した。 けれど、副都心が誕生したとき、既に西武有楽町が副都心の一番好きな人の一番の座にいて、西武池袋も副都心で は絶対になれないゆるぎない立場にいた。それは、副都心にはもうどうにもできない関係だった。 「副都心、既に紹介を受けていると思うけど、こっちが西武池袋でこっちが西武有楽町。さ、西武有楽町、副都心にご 挨拶をして。」 「貴様が営団の新路線か。しっかり指導してやるからわからないことがあればいうのだぞ!」 甲高い幼女の声が副都心の頭に響く。幼女の態度に有楽町は困った顔をしたが、一度西武池袋の顔を見て、諦め たようにため息をついた。 「あと、これはまだいってなかったけど、西武池袋は俺の奥さんで、西武有楽町は娘なんだ。」 有楽町は照れて顔を赤くした。幸せなのが一瞬でわかる顔だったから、副都心は一気に気分を害された。 「・・・よろしく。」 片目を隠した細身の美女は軽く会釈をした。その姿はまるで柳のようにしなやかで、有楽町より多少年はいっている ようだったが、女っぽさをにおい立たせていた。 「どうぞ、先輩ともどもよろしくお願いします。」 テンションの高い声に隠して、驚愕、落胆、怒り。そんなものが心の中を走った。 「今日のところは顔合わせってところで。双方にダイヤもいってるでしょ?とりあえずはあれにそって直通運転もする から」、 無表情な西武池袋と子供の西武有楽町、上機嫌を装っているが不機嫌な副都心に囲まれて有楽町は緊張して、胃 がきりきりした。 「とにかく、これからは仲良くやっていこ?ね?」 有楽町の困った顔はかわいくて、副都心の口角は勝手ににんまりと笑ってしまう。それを、西武池袋は見ていたが、 ひんやりと冷たい視線を投げただけで冷たく笑った。副都心に勝算がないことが明確なので、妻の座から滑稽な副都 心の恋を見下した。それに副都心は気づいた。そしていつか一泡ふかせてやろうと決めたのだった。 有楽町が娘を目に入れても痛くないほど可愛がっていることを知ったのは、実際に運行を開始してからだった。副都 心線も西武池袋線への乗り入れのため西武有楽町線を通るが、有楽町はよほど信用がおけないのか、何度も何度も 西武有楽町の顔を見に来ていた。 青いコートの裾をひらめかせながら、幼女は副都心に先輩として幼い声で指示をし、有楽町に副都心のふがいなさを 嘆いていた。その大人びたかわいげのない西武特有の振る舞いにも、有楽町は目を細めてはいはいというだけだっ た。 西武有楽町に対する警戒具合と比較すると、西武池袋線内での監視は緩やかだった。西武池袋はその見事な脚線 美が見て取れる膝丈のタイトスカートを愛用していて、副都心も視線を奪われたことがあるのだが、有楽町はいくら副 都心の目線が西武池袋の足に向いていても腹を立てるそぶりがなかった。そのことをさりげなく西武池袋に伝えたこと もあったが(無論、嫌がらせ的な意味で)、西武池袋は当然だろうと笑っただけだった。 そんなこともわからないのかと、見下しているような、西武特有ともいえる笑い方だったが、そこには女の裏側が隠さ れているように副都心は思った。理由は、どれだけ考えても副都心にはわからなかった。 副都心の開業直後は有楽町がなにくれと面倒を見ていたし、副都心の面倒を見る必要がなくなってからも、しばらく 有楽町は西武有楽町と副都心を二人きりにしないように気をつけていたようだった。 それに副都心が気づいたのは、西武有楽町と二人でジュースを飲んでいたときだった。 昼食時には有楽町と西武池袋、西武有楽町と揃っているが、おやつ時は副都心とふたりっきりの時も次第に増えて きた。 有楽町が自分にある程度信用を置いてくれているとの喜びとともに、それだけ自分はこの幼女の路線にいる時間が 多いのだと気付いた。 今日のおやつは西武有楽町からわけてもらったクッキーを少しとコーヒー。西武有楽町はオレンジジュースを冷蔵庫 に入った紙パックからコップ一杯分だけだして飲んだ。 ジュースとお菓子に夢中になっている子供を、副都心はじいっと見た。西武池袋に似ている、と長いこと思っていた が、それは行動から連想される部分が多いからであって、顔立ちは有楽町に似ているのかもしれない、と観察していて 副都心は思う。 釣り目は両親双方からだが、きつい顔立ちの美人の西武池袋より、西武有楽町のほうが口元にかわいげがある。 もし西武特有の居丈高で電波な態度さえ直せば、西武有楽町は有楽町にとても似ているのではないだろうか?それ は思いつきで確証はないのだけれど、気になりだすと、副都心は実験したくてたまらなくなった。 「ねえねえ西武有楽町さん。にこーって笑ってみてくださいよ。」 「は?なんだ気持ち悪いな。」 「お客様に対してどんな笑顔するんですか?参考にしたいなーって思いまして。」 コーヒーのマグカップを握って向かいに座った副都心は体を乗り出して西武有楽町に問いかける。先輩として、大人 の振る舞いをしたい西武有楽町はこのときばかりと微笑んだ。 子供らしく、底抜けに無邪気な笑顔。この子供の苦労を知らないわけではないから、それが素の顔だ、などとは副都 心は冗談でも思わなかったが、その顔は有楽町が他愛もない話で笑うときに少し似ていた。 なにも考えていない、警戒しない人間の笑顔を、父親は無意識に、娘は意識して、しているのかと思うと奇妙だった。 そして、さらに奇妙なことに副都心はその意識した笑顔をかわいいと思った。 「なにをしているのだ副都心。貴様も練習しろ、ほら!」 テーブルに身を乗り出して西武有楽町は副都心のほっぺたを引っ張る。 「やめてくださいよ、もうー。」 『イタズラしちゃいますよ?』 そういおうとした副都心は、休憩室のドアが開いたので黙った。小竹向原の休憩室に顔を出すのは、西武有楽町の 両親のどちらかしかいない。 「西武有楽町、ごめんなー、ちょっと車両点検があって・・・」 ドアノブを握ったまま、有楽町が固まった。副都心が目に入れても痛くない愛娘の手首をつかんでいる。幼い子供相 手だからそこまで意識しないが、これがもし妙齢だったとしたら、固まるどころではなく、一瞬で手が出ていただろう。仮 に、同意だとしても。 有楽町の後ろから、西武池袋が覗き込む。ひきつった顔をして、有楽町をおしのけて休憩室に入り、副都心の手を払 った。 「有楽町!貴様は後輩にどのようなしつけを行っているのだ!」 西武有楽町は、両親がどうしてこのような態度を取るのかさっぱりわかっていないらしく、呆然とした顔をしている。と ても無表情な顔は、妙に副都心の心をくすぐった。驚いたときの有楽町にそっくりだから、もうこの子供で有楽町の代わ りにしようと決めた。西武池袋にも良く似た子供でも、有楽町を抱く代わりにくらいはなると思ったのだ。 誰にも言わず、とくに有楽町にはいうまいと副都心は思った。自分の娘が副都心に抱かれたと知ったときに有楽町の 顔が見たい。なんならば、有楽町の義理の息子になるために西武有楽町を手に入れたっていい。 こんな幼女に何を思っているのだろうと、自虐で副都心は笑う。 成長しないといわれていたはずの西武有楽町の外見がなぜか成長した。幼女から少女へ、子供の柔らかな体はすら りと伸びた細い成長途中特有の体に変化していった。 西武勢は西武有楽町の成長を素直に喜んで鎌倉に連れて行ったり、何くれとはしゃいでいたが、有楽町は喜びつ つ、複雑な顔を見せていた。 「西武有楽町がさ、また大きくなったんだよ。」 「いいことじゃないですか。」 「わかってないなぁ、おまえ。そのうち『パパきらーい!近寄らないで!』とかいわれるんだぞ?あー考えただけで辛 い。世のお父さんたちの気持ちが数十年遅れでわかったよ。」 そんな話を居酒屋で酔っ払った有楽町から聞くのもはじめてのことではなかった。 「先輩、先輩は西武池袋さんと別れたいって思ったことないですか?」 「は?なんで西武池袋の話になるんだよ。」 だいぶ酒が回って顔を赤くした有楽町は、不審げに副都心の顔をまじまじとみた。副都心の恋心をすぐに見抜いた西 武池袋と違い、有楽町はどれだけ好意の視線にさらされても気付かない。 副都心はこの恋心を有楽町に伝えなかった西武池袋に感謝をしているし、同じくらい憎んでいる。 「結婚生活の先輩に伺いたいんですよ。あんなじゃじゃ馬をどうやって乗りならしたんですか?」 「今も乗りならせてないよ・・・ひきずられっぱなしで。でも、西武池袋のこと愛しているし、あとは西武有楽町がいるか らかな。子はかすがいというし、別れたくなったことはないよ。」 さらりといってのけて、有楽町は照れ笑いをした。後輩にのろけるもんじゃないな、なんていって。その顔に精液か、も しくはせめてビールでいいからぶっかけてやりたいと思った。 この人をぐちゃぐちゃにしたい、せめて心のうちだけでもと、そののろけ顔をみて思った。西武池袋と西武有楽町で埋 め尽くされた有楽町の心の片隅に、二人にはいえない秘密を持たせるか、せめて大きく心を動かしてやりたい。 (大好きです。) 声に出さず、唇だけを動かしていうなんてロマンチストぶったのに、当然のように有楽町は気づかなかった。 西武有楽町を押し倒した。驚いた顔は、有楽町にそっくりだった。 つり目も、もう西武池袋に似ているとは思わなかった。 西武有楽町を組み敷いてから、そういえば有楽町には指一本触れたことがなかったのだと思い出す。いつもあんまり そばにいたから、手くらい触れたことがあった気になっていたけれど、思えば有楽町の肌がしっとり肌かさらさら肌かも 知らない。だから、しっとりして弾力のある西武有楽町の肌が有楽町に似ているのかどうかは見当もつかない。 明るい茶色の髪は両親のどちらにも似ていないけれど、後頭部の形が有楽町似だと思った。頭の形も、足の長さも、 指の形も、表情も全部知っているのに、さわり心地だけ知らない。 考え込むような副都心の態度に、西武有楽町が不審げに視線をよこす。 「・・・誰のことを考えている?」 あなたの父親のことですよ、とはいえなくて唇を唇でふさぐ。西武有楽町は何か言葉を飲み込んで、副都心のされる がままにされていた。 痛いだけの破瓜が済んで、気持ちよくもない行為が終わって、西武有楽町は涙の跡もあからさまに、副都心の腕の 中で無邪気に眠っていた。 その寝顔はとても有楽町に似ていて、副都心は本当に罪悪感にかられた。西武有楽町を性的な意味で好いている路 線がいることも知っていたのに、それも無視して有楽町の代わりに西武有楽町の処女を奪ったことに、いまさらながら 重みを感じたのだった。 朝、副都心の腕の中で目覚めた西武有楽町は眠たげに目をこすりながらいった。 「なあ、なんで私がお前と寝たのか教えてあげようか?」 裸でベッドで並んで、顔を至近距離に寄せた格好はまるでカップルのようだが、西武有楽町は不敵に笑っていた。 「聞きたくない。」 つい先ほどまで少女だった女は、有楽町にちっとも似ていない、母親譲りの目で副都心を責めるように嘲るように見 つめる。 「これで、お前は我々との直通を切れまい。」 擦り寄るように身を寄せてくる西武有楽町の顔は見えない。しっとりした肌が触れてそれはそれで気持ちいいのだけ れど、きっと有楽町の肌はさらりとしているのだろう。なぜかそう思って、副都心はそばにいる女をベッドから落としてし まいたくなった。 「有楽町ばっかり見ているからこんなことになるんだ。」 足元をすくわれて、副都心は初めて女の怖さを思い知る。 「このことを、有楽町に知られたくないだろう?」 交渉する西武有楽町は、とても西武池袋に似ていた。いまは、とても有楽町に似ているだなんて思えないほど、西武 有楽町は西武の一員だった。 「私が有楽町の代わりになってあげよう。」 そういってしがみつく西武有楽町の心のうちが、副都心にはさっぱり理解できなかった。 「だいすき。」 とても重い言葉で、副都心はようやく事態を飲み込めたのだけれど、もうどうしようもなく、ただ西武有楽町の要求を 呑むことしか出来なかった。 「私と一緒にいて。」 (5月24日) |