先輩はずるい。
少し先に生まれたから、少し先に接続できたから、少し先に乗り入れできたから。














有楽町×西武池袋+副都心

恋は戦争



















 「なあ、有楽町。」
 「なに?仕事の話?」
 「いや、そうではないんだが・・・」
 「なら、明日にしてもらえる?今日は疲れちゃって・・・寝たいんだ。」
 「わかった。私は書類を作ってから寝るから、先に寝ていてくれ。」
 「うん、ごめんね・・・」
 「気にするな。」
 ゆっくりと寝室のドアを閉めてリビングに下りる。もう全員が引き上げた部屋の電気を付けてからノートパソコンのコー
ドをコンセントに差し込んだ。
 パソコンの電源を入れると、パソコンが起動しファンが回り機械の音がする。機械が仕事をしいてる音という意味で
は、車輌がレールの上を走る音と性質は同じものだと西武池袋は思う。だが、有楽町は眠りばなにそういった機械を思
わせる音が聞こえることを好まない。
 水をいれたグラスをパソコン横に置いて、かちゃかちゃとキーボードを叩いていく。かちゃかちゃ、かちゃかちゃ。文字
をたくさん打っているはずなのに、書類はちっとも進まない。そんなに急いでいる書類ではない。なのに、寝室にいたく
なくて、いたたまれなくて少しでも仕事で頭を紛らわせようとする。
 (あの白いワイシャツに、あのにおいがした。気のせい?いや、確かにしたんだ。)
 そのことを、許せない気持ちでいる自分を許せなくて、西武池袋はまた書類に向かう。
 かちゃかちゃ、かちゃかちゃ。
 もうこれ以上は無理だと、眠気に負けてきたところでソファに横になった。
 部屋には戻りたくない、あんなに好きな人が自分の部屋で眠っているのに、戻るくらいなら寝心地の悪い冷たいソファ
で横になることも構いはしない。
 けれど、ソファで寝たと知られるのは嫌で、西武池袋は誰よりも早く起きるように携帯のアラームをセットした。
 パソコンの電源を落とすと、ファンの音さえなくなって、冷たいしんしんとした静けさだけが耳につく。静寂がうるさい、
こういう日に限って、いつもけたたましいはずの暴走族も走らない。
 (でもいいんだ、これで。明日になれば・・・)
 明日になれば、会長のお導きのもと列車は武蔵野をかけて、西武の繁栄は続くのだ。きっといい天気で、冷たい風が
 吹いて、しかも西武ライオンズは勝って。
 これ以上の幸福はないのだから。

























 有楽町線の上り始発を見送ってから、西武池袋は池袋に向かった。今日も仕事は山積みだし、ルーティーンワークと
はいえ、電車を走らせることに油断は許されないから彼の気はいつもぴんと研ぎ澄まされている。まるでガラス細工の
ように。
 副都心はそんな西武池袋が好きだ。張り詰めた、少し指を触れただけで崩れ落ちそうな緊張感。それが萎えている
様を見るととてもとても許しがたい気持ちに襲われる。そして、その原因を知っているだけに、とてもほおってはおけな
い気持ちになるのだ。 
 「僕を選びませんか?」
 「は?」
 「先輩より、僕の方がずっと貴方を大切にします。」
 「・・・何を馬鹿なことを。」
 「僕は、貴方が不幸なところを見たくないんです。」
 「・・・不幸、なあ。」
 西武池袋は自身を不幸などとは思ったことがなかった。なぜ?今日も太陽は輝き、電車は遅延しつつも無事に顧客
を運び、いつものように一日が終わるからだ。
 「だって、先輩は二股かけてるじゃないですか。」
 ふてくされた子供のように副都心は頬を膨らませる。年下であることを自覚したかわいらしい仕草で、憎たらしくも、人
の心にずけずけと立ち入ってみせる。
 「二股などと・・・乗り入れを二社と行っていることでは貴様も同じだろう?それに貴様は小田急と東急とも乗り入れの
話があるではないか。四股か?」
 からからと西武池袋が笑った。目だけが笑わず、これ以上言うなと睨む。
 「僕の乗り入れと、先輩の乗り入れは違うじゃないですか。先輩ばっかり、ずるい。」
 手を上げるかもしれないと、自分の中の自制心と戦っていた西武池袋は、毒気を抜かれた。
 「ずるい・・・?」
 「そうですよ、僕だって西武池袋さんのベッドの中まで乗り入れしたいです!あ、東上さんはいいです、タイプじゃない
で。」
 続けた東上云々の部分は西武池袋の耳に入っていなかった。『ベッドの中まで乗り入れ』そのあからさま過ぎる表現
に、大正生まれの男は耳まで真っ赤に染めた。
 「あー、赤くなってる。可愛いなー西武さんは。」
 わざとかわいらしくにこにこして首を傾ける。セルフマネージメント力に有り余る力を発揮する副都心は、どういうとき
にどういう仕草をすればよいか心得ていた。
 「ねぇ?僕はこうみえて誠実な男ですよ?あなたと決めたらあなた以外の人のベッドにはあがりません。もちろん誰と
もキスしないし、触れさえしない。爪の先から頭のてっぺんまで、僕の全部を貴方に捧げます。」
このときばかりは誠実に聞こえるように、西武池袋の右目をしっかりと捉えて噛まぬように気をつけながら一気にまくし
たてる。
 「何を、馬鹿なことを・・・そういって貴様だって」
 そこまで言って、西武池袋は口をつぐんだ。
 「そもそも有楽町と私は仕事の付き合いしかない。東上と有楽町は知らんがな。つまらぬことで私の手を煩わせる
な。」
 池袋を離れようと歩き出した西武池袋に、副都心はくっついて歩き始めた。
 「貴様、なんで付いてくる。」
 「えーだって、僕も直通運転ありますし。所沢ってあんまりわからないから案内してもらおうかなって。」
 「案内って・・・」
 デートみたいじゃないか、といおうとして西武池袋は口をつぐんだ。今日はこんな調子で、このまま話していたらずっと
 副都心のペースでことは進み、至って不快な思いをするのは目に見えていた。
 (それでも・・・)
 それでも、にこにこと西武池袋を見つめる副都心の目に悪意はないように見えた。(あくまでも、見えたというだけなの
だが。)
 「ときにはよかろう。これも仕事のうちだ。」
 「ありがとうございます!いやー西武さん優しいなぁ。」
 くっついてくる副都心に、西武池袋は悪い気はしなかった。西武有楽町のことといい、自分より幼い者について回られ
るのが嫌いな男ではない。
 「所沢って名物料理とかあるんですか?」
 「いや・・・特にないな。渋谷、新宿、池袋と都心に慣れた貴様にはつまらないところだと思うぞ。」
 「でも、そこが西武池袋さんの地元なんでしょ?」
 「そうだ。」
 「なら、みたいです。そこがどんなところだったとしても、あなたの地元なら世界中で一番ステキなところです。」
 なぜ副都心が急にそこまで歯の浮くような言葉をつらつらと並べるのか西武池袋にはわからなかった。しかし、悪い
気はせず、いいように扱われていると思いながら、若い男からの賛辞を素直に受け取って楽しむことにした。
 (時にはそういう休養も必要なのだ。)
 そういって若い男(有楽町)と付き合い始めたことを、西武池袋は忘れている、忘れているふりをしている。
 (ほら、別に不幸じゃない。)
 いい天気だし、若い男に言い寄られて悪い気はしないし、遅延もせずに電車は進んでいる。
 今日も幸せじゃないか。
 (でも、それは何もないってだけじゃないの?嫌なことにふたをして忘れているだけじゃないか?)
 時折首をもたげる、自分の中の「武蔵野鉄道」を、無表情の下で押し殺した。冷静に客観的に自分を見つめるもうひ
とりの「自分」のさえた目が怖かった。






















 所沢駅には「特にこれ」というものはない。一応おだんごが名物なので、プロペ通りの店で二本かって一本を副都心に
渡した。
 「何味ですか?」
 「しょうゆ味。」
 「みたらし?」
 「みたらしじゃない、しょうゆ味だ。」
 わけがわからない、と言いたげにおだんごをじっと見つめる副都心に、いいから食べろと支持した。見つめたって味
がわかるわけもない。
 「あー、甘くなくていいですね。おしょうゆ味だ。」
 「だろう?所沢といえばこれだ。他に何かあるかなぁ。」
 「僕、航空公園いってみたいです!電波が受信しやすいんですよね!?」
 副都心は確信的に『電波』との言葉を使って見せたが、西武池袋はちらりと副都心をみただけだった。
 「ただの公園だぞ。」
 「いいです、みたいな。」
 「じゃあ西武新宿線に乗換えだ。」
 「え?池袋さんのところじゃないんですか?」
 「歩けなくはないけど、『航空公園駅』は西武新宿線だな。」
 「じゃあいいです。池袋さんの路線じゃないなら見ても意味ないですから。狭山湖見たいです、狭山湖と多摩湖!」
 「それこそ私の路線じゃないぞ。なんでそんなところにいきたいんだ。」
 「こないだテレビで見たんですよー、露天風呂つきのラブホがあるって。」
 怒られる、と思った。怒られるまではいかなくとも、お小言をくらうとわかっていて副都心はその話題をふったのだ。
 「そういえば深夜番組でやっていたな。あそこはペットホテルもついているんだぞ。なかなか至れり尽くせりではない
か。」
 さらり、と返されたので副都心の方が驚いてしまった。
 「いったことあるんですか?先輩と?」
 「いったことはあるけれど、お前の知っている人とではない。」
 笑っていた。自嘲気味に。それが結構寂しそうな顔だったので、聞いてはいけない過去なのだろうなあと副都心はそ
こには突っ込まなかった。
 「今晩僕と行きません?」
 「・・・シラフで?」
 所沢からどれだけの距離があるだろう、タクシーでも大したことないかななんて副都心は計算した。それくらい、西武
池袋の言葉は肯定感にあふれていて。
 「今すぐ飲みましょう。俺、焼酎くらいボトルでイッキしますよ、今の気分なら。」
 「冗談だ。本気にするなばか者。」
 くるりと後ろを向いて歩き出した西武池袋を慌てて追いかける。不機嫌にさせてしまったかと不安にかられて、西武池
袋を追い越して顔色を伺う。
 「どこまで行くんですか?」
 「渋谷。あまり所沢でうろうろしていては業務時間が終わってしまう。まだやるべき仕事は残っているだろう?所沢案
内業務もお仕舞いだ。」
 「業務って・・・俺、所沢気に入りましたよ!また来ていいですか!?」
 「またくるもなにも、乗り入れ先なのだから、貴様の車両でこれるだろう、いつでもいくらでも。」
 「しょうゆ味のお団子、おいしかったです。」
 「それはよかった。」
 「店の場所を忘れちゃったので、また連れて行ってください!」
 子供のようにまっすぐ見る副都心を、西武池袋はまぶしいものを見る思いで目を細めた。自然と視線を合わすのにお
びえて視線をそらしていた。
 「・・・いいぞ。ただし、今度は用務時間外にな。」
 「!!ありがとうございます!」
 西武池袋は今日、ほとほと疲れ果てていた。誘いを交わすこともかわすことも、同じくらい疲労する。
 それでも、副都心との一日は楽しかった。暗く重くなっていた気持ちが、一日分救われたように思う。
 「池袋まで送っていこう。そこからは自社線で帰れ。」
 練馬で西武有楽町に交代せず、池袋まで送るのは今日のお礼のようなものだった。一時間にも満たない所沢の滞
在。それが、いま西武池袋の心を大きく揺るがしている。
 「大丈夫ですよ。ちょうど自分トコの車両来てるんであれで帰ります。・・・お見送りはいらないので、今度池袋で待ち合
わせをしましょう。」
 「そうか?なら私はこのまま本社に戻る。」
 「じゃあ、また。」
 タイミングよく現れた副都心線の車両にするりと乗って、副都心は振り向きもせずあっさりと立ち去り、副都心がいなく
なった西武線のホームで、濃厚な時間と反比例する虚無感に西武池袋線は途方にくれてしまった。






















 副都心とのデートのような業務のようなひと時から数日後、有楽町が所沢の西武線の家に泊まりにきた。抱きついて
も、今夜はあのにおいがしなかった。忘れもしない、あの腹立たしいにおい。
 「久しぶりだね。最近は何してた?」
 「とくには何も。通常業務ばかりだ。大きくダイヤが乱れることもなかったしな。」
 「本当に?」
 「本当に。」
 「副都心とデートしたって?」
 「デートではない。所沢の案内を請われたから、駅の近くを案内しただけで。」
 「そういうのをデートっていうんじゃない?」
 「仕事だ。」
 「ねえ、西武池袋。」
 「なに。」
 「俺のこと、好きじゃなくなったらいつでもいってね。」
 (いつでも別れる支度は出来ているから。)
 省略された後半部分に気づけないほど、西武池袋はおろかではない。
 「・・・うん、わかった。」
 西武池袋の頬を一筋の涙が伝ったけれど、有楽町は振り向かなかったので気づかなかった。もう終わりだとわかっ
て、同じ空間にいるなんてとても滑稽だった。
 (終わりじゃない、私が、何もいわなければ・・・。)
 ひとつのベッドに入っているのに背中合わせでは意味がない。付き合い始めたばかりの頃は腕枕をされていたな、な
んて思い出すのはもう終わったからなのだろうか?
 有楽町が眠ったのを確認してから、西武池袋はそっとベッドを出た。前回有楽町が泊まったとき同様、誰もいない階
下の部屋に下りる。冷蔵庫の中の麦茶を出して飲んだが、冷えすぎていて体に合わなかった。仕方なく、やかんにお湯
を入れて沸かす。
 そのとき、足音がしたので体を強張らせた。
 「なんだ、西武池袋か。有楽町ほっぽって何しているんだ?」
 「なんだ、はこちらだよ。西武新宿。水か?今ならお茶をいれるぞ。」
 「お茶もらう。紅茶?」
 「馬鹿か、眠れなくなるぞ。ほうじ茶だ。」
 「そうか。」
 お湯が沸くまでの奇妙な沈黙、奇妙な時間。付き合いが長いから別段苦にはならなかったが、変な時間だった。二人
とも何をするでもなく、深夜のキッチンで宙を眺めている。
 「有楽町と別れるのか?」
 「何か聞いたのか?」
 西武新宿は気まずそうにためらってみせてから、楽しげにいった。
 「副都心と今日所沢であってな。『今度から俺のことお兄さんって呼んでもいいですよ』だってさ。俺のほうがお前より
年上なのになあ。今度から義弟と呼ぼうかと。」
 「あいつの話を真に受けるな。」
 はあとため息をつく西武池袋は美しい。家族でなければ、思わず優しい言葉の一つでもかけたくなる風情だ。たとえ、
返ってくるのが辛らつな言葉とわかっていても。
 「なにも、会社のために有楽町と付き合い続ける必要はないんだ。あいつもおまえも、会社の利益のためであれば我
慢して一緒にいるだろう?別に会社なんてもんはお前らの個人的付き合いがなくても続くもんだ。」
 「わかっているよ。そういう問題じゃないんだ、本当に個人的な問題なんだ。」
 別れればよかった。別れられればよかった。
 「わかっているなら、好きにしたらいい。俺らはいつでもここにいるし、お前の家はここなんだから。」
 熱いほうじ茶を西武新宿に勧めた。いま顔を見られたうるんだ目がばれてしまう。
 「おまえにしてはだいぶいいことをいうな。」
 「まあ、おまえの兄貴分だからな。お茶は部屋で飲むわ。おやすみ。」
 熱いマグカップを大き目のパジャマのすそで抱えて、西武新宿は部屋に戻っていった。キッチンには西武池袋が一人
で残される。キッチンに置いてあるスツールに軽く腰をかけて、西武池袋は今後のことを思案した。有楽町と別れるにし
ても、一人寝のベッドはあまりに寂しくて。




















 早朝、全員にお弁当を渡した後、西武池袋は有楽町と一緒に池袋に行くことにした。普段ならば、西武有楽町も同行
するが、今日は西武秩父に頼んだ。
 「なあ、有楽町。」
 「なに?西武池袋。」
 「今まで楽しかったよ、ありがとう。」
 「別れたいの?」
 「・・・別れたい。」
 「副都心がきたから?」
 「いいや。」
 電車の外を見る。地下鉄路線にとって、窓の外はどんなものなのだろう。全線が地上の西武池袋など、自分の路線
に戻って外に出ると生き返る気持ちになる。とくに、今のようないい季節は。
 「そっか。じゃあ、別れようか。」
 本当は、有楽町のワイシャツに東上の使うせっけんの匂いや、東上の家のにおいが残っていることがいやだった。東
上と有楽町が親しげに話すのをみて、嫉妬するのがいやだった。
 「職場で付き合うと気まずいもんだね、また明日からもよろしく。」
 困った顔で笑う。そんなところが好きだった。こんなシーンでも笑顔を絶やさず、なんとか丸く治めようとするところと
か、とても好きだったのだとあとで気づく。
 「ああ、また仕事で。」
 練馬で降りる有楽町を見送って池袋駅に向かう。とても愛していたというのに、別れてとても救われた気持ちだった。
もう、何も気にしなくていい。あのワイシャツを洗うこともない。
 ゴトンゴトンと電車にゆられていたら携帯のバイブがなった。副都心からのメールだった。
 『今日の業務後、所沢に遊びにいってもいいですか?』
 なんてタイミングのいいメールだろう、まるで見ていたかのように。と思ったら、隣の車両から副都心が現れた。
 「おはようございます。今日もいい天気ですね。」
 「ああ、いい天気だ。気分までさわやかになるな。」
 「それは先輩と別れたからですか?」
 自然、西武池袋の眉間のしわが濃くなる。他人に指摘されたい話題ではない。
 「聞かれたくないなら家で話してくださいよ、ここは公共の場ですよ。で、どうです?俺と付き合う気になりました?」
なれなれしくとなりに座った副都心が西武池袋に手を伸ばしてきたので、その手をぱしっと払った。
 「もう若い男はこりごりだ。」
 「なに年寄りぶっているんですか。」
 「年寄りぶる・・・そうだな、私はまだ鉄道としてはそう年寄りでもないのだし。もっと若々しい気持ちでいてもよいな。」
 「そうですよ、だから今晩一緒に例のラブホいきませんか?」
 あまりにストレートな誘い文句は、若い子にはやっているのか、それとも副都心の性格によるものなのかわからない、
 やっぱり年寄りなのかもしれないと西武池袋は思う。
 「そうだな、そのうちな。」
 年寄りならば年寄りらしくはぐらかす。それくらいしか、年をとって得た恋愛のテクニックはなかった。
 「そのうちって、明日ですか?明後日ですか?」
 「そうだなぁ・・・おまえがいい男になったらだよ。」
 「なら今日ですね、約束ですよ!」
 電車は池袋駅についてドアが開いた。副都心は言い残したまま走っていってしまう、訂正も返事も返す時間を与えな
いまま。
 「はぁ・・・営団のやつらは・・・まったく・・・」
 いい天気だから、今日みたいな日は地下にもぐるのはもったいない。今日は夕飯をいつもどおり作ろう、西武全員に
プラス1人前、今までどおりいつもどおり。そして副都心を呼んでやろう。まずは、西武でお食事からだ。
 西武池袋はゆっくりと立ち上がって、池袋駅のホームで大きく息を吸った。
 晴天の日差しが、特急乗り場のほうから差し込んでいて、とてもきれいだった。

















































(6月14日 初音ミクの名曲から)