体の相性がいいけど、それ以外はとくにない。西武池袋も秩鉄もフリーでお互い以外に相手がいるわけじゃないんだ けど、体以外は合わないと知っているのでいまさら付き合あったりしない。 「何をいっても、不健全で不真面目な関係に代わりはないな。」 もう秩父鉄道は帰り支度を始めている、外で会えばよく話すノリの良い男だが、西武池袋と二人きりのときは口数が 少なくなった。 それは余計なことを言わないように用心しているようで西武池袋は不快になった。何を口にしたら失態なのか、西武 池袋は秩父鉄道の本心を知らないが昼ドラのように「実は好きだ。」なんていう男ではないと思うし、セフレとしか思って ないと言われたところで傷付くはずもない。 二人っきりになると変わってしまう理由は西武池袋の思い当たる範囲になくて、どうでもよくなってしまう。溜まったもの さえだしてしまえばすっきりして、西武池袋自体口数が少なくなるので丁度良いともいえた。それでも、なんとか会話を 試みてはこりずに失敗する。 「・・・貴様は東上をどう思ってるんだ?」 なんとか会話をしてみようと、西武池袋は今までタブー視していた東上の存在を話してみた。秩父鉄道と西武池袋の 関係を知ったときの東上を想像すると西武池袋はたまらなく楽しい気持ちになるので暇なときによくどんな形でバレる か、シュミレーションをして楽しんでいる。けれど、一人遊びならば楽しいが現実になったらどれくらい面倒なことになる かいくつか経験した修羅場から反省して、実際に東上と秩父鉄道をその遊びに付き合わせる気はなかった。西武池袋 はその面倒を仕方ないと思えるほど秩父鉄道を愛しちゃいない。 「東上か?いい奴だよ。」 秩父鉄道はいつもくったくなく豪快に笑う。その顔を泣かせてみたいと西武池袋は猛烈に掻き立てられたが、そうする には東上を交えてぐっちゃぐちゃにならないといけないのでやめておいた。 「なら、私は?」 その質問の悪趣味さに西武池袋は自分のことながら辟易するが、秩父鉄道を独占したいと嫉妬を撒き散らしている わけではない。ただ、目の前の男の反応が見たいだけだった。 「西武池袋か?いい奴だよ。」 東上と全く同じ感想を述べられ、西武池袋は高らかに笑った。なんとなく秩父鉄道という男がわかったのだ、ほんの欠 片だけ。 「なんだ、嫌だったか?」 西武池袋は目の端に浮かんだ涙を指ですくってから、もう一度笑った。 「いやいや、いいよ秩父鉄道。私も貴様をいい奴だと思っているしな。しかし、おかしい!」 西武池袋は上機嫌で秩父鉄道に跨る。もう帰るつもりであったが、こんな上機嫌で興奮した状態で帰れるなんて男で はない。秩父鉄道の唇をべろりと舐め、それから深く口内を交わらせる。今すぐにも挿入を待ちわびて勃起する性器を 押し付けながら、西武池袋は秩父鉄道をゆっくりと押し倒した。 「なんだ、今日はえらく積極的だな。」 秩父鉄道は楽しげに先ほど着たばかりの西武池袋の服を脱がす。西武池袋も秩父鉄道の服をくつろげ、荒々しい肌 に唇を這わす。 「お前は本当にいい奴だよ。」 秩父鉄道の体も西武池袋の体も、挿入の一瞬を待ちわびている。電流が走るような一瞬のあと、もう世界中がどうな ってしまってもいいと思うような快感が押し寄せる。なのに、終わってしまえば虚無感しか残らない。その理由を知って いても、二人は誘い誘われ一瞬を共にする。 「なぁ、貴様本当は東上のことをどう思っているんだ?」 跨って粘膜同士をすり合わせて息を上がらせながら西武池袋は先ほどの質問を繰り返した。 「いい奴だよ。」 下から腰を打ちつけながら、秩父鉄道は先ほどと同じ答えを出す。 「なら、私は?」 西武池袋は全く同じ会話を繰り返す。その悪趣味さは先ほどを上回る。 「それを、今聞くな。」 ひときわ大きく突かれると西武池袋ののどから溢れるのは悲鳴に近い嬌声だけになってしまって、それ以上会話を続 けられなくなってしまった。 「あっ・・!やっ・・もっとっ・・っ・・・!」 途切れ途切れの呼吸の中でやっとの思いで酸素を吸い込んで、西武池袋は秩父鉄道に縋る。その無常観に西武池 袋は秩父鉄道をどこか遠くに視界に入らないどこか遠くへ追いやってしまおうかと思う。でも、そうしたら東上が泣いてし まうから、それは嫌だなぁなんて真っ白な頭で考えた。 (2010.8.8) |