R18! JR武蔵野×西武池袋 終夜運転 西武池袋は急いでいる。 (終電が来てしまう!早く!早く!) 体はしゃんとしていて眠気など全く感じない。が、あと10分もすれば安寧の時間が本人の希望を無視して強制的にや ってくる。両足を泥沼に捕まれ沈みゆく様子を想像させる一瞬のあと、西武池袋は糸が切れたかのように眠りに落ち る。布団に入るかせめて座っていないと大変な目にあってしまうので、終電に焦る気持ちはデート帰りのカップルや明 日も働くサラリーマンの比ではない。 (あと3分・・・!) 焦るとかえって鍵がうまいこと開かない。なんとか開いたドアを全力で開けて全力でしめて鍵をかけると、コンタクトを 外すまもなく西武池袋は布団に飛び込んだ。 終電の時間ぎりぎりまで西武池袋の感覚ははっきりと冴えている。それなのに。 『カチ、カチ、カチ、』 体の中を時計の針の音がする。きっと空耳に違いないのだが、その針の音は時刻どおりの運行でも遅延していても、 終電の時間を寸分たがわず伝えた。 『カチ。』 音が止まった。それとともに西武池袋の思考も深く眠りに沈んでいく。明日までにやっておきたかった仕事も、実はみ たい深夜番組も、全部もう向こう側だ。始発までの数時間、死んだように眠って、そしてまた明日の朝いつも通りの一日 が始まる。 ある日、西武有楽町が荷物を抱えて可愛らしく走り寄ってきた。 「これをハメハメハ大王に渡すようにと預かりました。西武池袋、ハメハメハ大王は沿線にいるのですか?」 目を輝かせる西武有楽町を落胆させたくはないが、西武池袋はどっと疲れてしまった。機会あるごとに他路線と西武 の間を取り持とうとする有楽町がまたもおせっかいを焼いて、刺激しやすい子供心を巧みにくすぐって持たせたにちが いない。 「西武有楽町、そのハメハメハ大王は国鉄の武蔵野線のことだ。」 「なぜですか。」 「雨が降ったら遅延して風が吹いたら運休だろう。」 納得のいった西武有楽町が笑いを噛み殺していた。 「私から渡しておこう。あんな駄路線にも、ときには会長のありがたいお言葉を聞かせてやらねば。」 有楽町から伝言ゲームのように伝わってきた紙袋を受けとると思いの外軽かった。中身はお菓子のように思われた が、武蔵野には似合わないなと西武池袋は思う。似合うものを知っているような自分の口ぶりに腹がたった。 「西武池袋、忙しくないですか?」 気遣う西武有楽町の様子はとてもかわいい。その頭を撫でてやりながら、西武池袋は微笑んだ。 「なに、気にしなくていい。ああそうだ西武有楽町。今日は池袋に泊まるから新宿たちとご飯を食べてくれ。」 唐突な外泊宣言。露骨すぎるが、西武有楽町は素直に頷いた。 「わかりました。よろしくお願いします。」 (なんていい子に育ったことか!) 会長のご慈悲のお恵みを受ければ当然だが、私鉄の中でもガラがよくない路線に育てられてよくもまぁという感慨は なくならず、西武池袋はふわふわの髪をなでてやった。 7時半に仕事を打ち切った西武池袋は東日本のサイトから武蔵野線がいそうな駅にあたりをつけて電話した。 「おそがけに失礼致します。私、西武池袋と申しますが、武蔵野様はそちらにいらっしゃいますか?」 国鉄相手に丁寧に話すのも武蔵野に様をつけるのも背中に寒気が走るようなことだ。 『少々お待ち下さい。』 職員の困惑した返事のあと、保留音が流れ始める。よくある機械音。 『おー、替わったぞ。』 「営団から預かり物がある。渡しに行くが、どこがいい。」 武蔵野の予定を考慮しない、有無を言わせぬ物言いもすっかりとお互いなれたものだ。 『あっそう。じゃ、府中本町で一時間後に。』 「わかった。」 受話器を置いてから、武蔵野線の発車時刻を確認する。それから新しい服に着替えてから事務所を出た。 「あっあっ・・・あ、は、」 「もっと腰振れって。」 軽くではあるが腰の辺りを叩くと西武池袋は普段の態度をいっさい出さず、先ほどよりも少し腰を上げて深く出し入れ を繰り返した。 「あーっ、あ、あっ、あ」 だらしなく口を開けっぱなしにして淫らに腰を振る西武池袋の痴態をしたから見上げるのが武蔵野は好きだ。両腕で 重心を支え、抜けないように気をつけないように腰を上下に振りながら、何も考えていない目で武蔵野をちらりと見る瞬 間にイきそうになる。もっと何十分も何時間も見ていたい絶景だが、時計を確認するともう西武池袋の終電は間近に迫 っていた。 「そろそろいくか。」 上に跨っていた西武池袋の体を己の性器から抜き、器用な動きでベッドに仰向けにした武蔵野は、ぐちょぐちょに濡 れた肛門に深く挿した。 「あああっ!あ、やだむさしのっ、あっ!そん、なっ、あっ!、きゅう、にっ!」 「うるせえ。いいから早くイけって。」 荒々しく犯されながら手で性器をすかれ、西武池袋は声にならない、ひきつった小さな悲鳴をあげて果て、武蔵野の 手の中に精液を吐き出した。指の隙間から溢れたものが西武池袋の腹部にかかるが、気にせずに武蔵野は精液でべ とべとの手で小さくなった西武池袋の性器をすきつづけるうえに抽送もやめない。 「むさしの、あっ、ほんとうにむりっ、んっ、やだ、やめてっ」 「あん?てめえこれ好きだろ。」 目を固く閉じ、弱弱しい力で武蔵野を離れさせようと押し返してくる腕をまとめて片手で押さえた。本気で抵抗する気 はないのか、西武池袋は軽く押さえただけでそれ以上抗わずただ嬌声をあげていて、快楽に耐えようと時々唇を噛ん だ。 「あ・・・、んっ、・・・あぁっ、ああ・・んっも、だめっ・・」 「だめだめってそればっかだよなぁ。」 眉間にきつくしわを寄せた西武池袋を笑ってやって、それから武蔵野は先ほどよりも強く腰を打ちつけた。 「やっ!・・あ、いくっ!・・あぁあっ!」 先ほど射精したばかりにも関わらず西武池袋はまた精液を吐き出し、連続で与えられる快楽に追いつこうと必死であ った。 「おれもあとちょっと・・・やっぱりてめえは具合いいよ。」 もう耐えられないと嬌声もあげずに西武池袋が唇を噛む中、数度抜き差しを繰り返して、武蔵野も西武池袋の腹の 上に射精した。息切れに肩を上下させながら武蔵野がティッシュをとろうとたちあがろうとしたとき、「じかんだ。」と西武 池袋がため息をもらすように小さくいった。その意味を武蔵野は承知している。 「気にせず寝とけ。」 返事をする間もなく、西武池袋は深い眠りの中に溺れるように落ちていった。 武蔵野が汚れた体を拭き終えて布団をかける頃には、いつも規則的な寝息を立て始めている。黙っていればきれい な顔をした華奢な体を抱き寄せた。こうなってしまうと朝まで絶対起きないので、無反応さえ気にしなければ夜通し抱く こともできる。けれども今日は肩まで布団をかけてやって、西武池袋が熟睡しやすいようにと電気を消して真っ暗にして やった。武蔵野は西武池袋の体のさわり心地を確かめながら、ぼんやりとしていた。 武蔵野は時折うつらうつらとするが、車輪の音を遠くに聴いて目をさます。まどろみを漂い続ける幸福を知らないなん て、夜間の運転を行わない路線はなんて気の毒なのだろうと武蔵野は思う。死んだように眠る幸福など彼は全く必要と していない。 西武池袋が夢を見る間、武蔵野はまどろみに幻を見る。それはどちらも同じような光景で、違うものを見せている。 同じ品種と思われる外観を持ちながら、彼らは全く別物なのだ。 (2012.8.4) |